昨年だっただろうか。
母親が携帯をらくらくフォンにして、よくメールがくるようになった。
しかも、毎回こってこてのデコメなのだ。
絵文字すらろくに使えない僕は、いつもそっけないメールを返すんだけど、
毎回それじゃさびしいかなと思って、少しだけ、絵文字をつかう。
お久しぶりです。
元気でやっております。
そちらも、もう寒いでしょう。
こっちは寒いです。
相変わらず僕は部屋では服を着ませんが。
それではまた、年末には帰ります
こんなメールを送って、最後にひとつ絵文字を載せる。
ハートでもなく、星でもなく、笑顔でもない。
そう、うんこの絵文字だ。
でもたぶん、むこうはドコモだから表示されていないはずなんだ。
「年末には帰ります=」ってなってるはずだ。
最後にどんな絵文字が入っていたのか。
向こうにはわかるすべはないけれど、
わからないほうがいいことってあるよね。
だって、面とむかって母親にハートマークなんて送れないじゃないか。
気恥ずかしくって「いつもありがとう」って言えないのと同じさ。
だから、ぼくはうんこの絵文字を毎回最後につけるんだよ。