都内で20時まで時間ができてしまった。
約一時間、仕事のカバンをもったままだとめんどくさいけど、家に帰るには間に合わない。
だけど、コーヒーを飲むだけでは味気ない。
そういう時どうすればいいだろう。
いままで僕はどうしてきただろう。
思えば学生の頃は時間を潰すのに精一杯だった。
通学のための電車は一時間に二本しか来ないし、そもそも授業中というのはそれ自体が暇つぶしの対象になる。
その頃の僕は何をしていただろうか。
いつも違う場所の事を考えていた。
お腹がいたいけど、トイレにいくとは言えない小学生の頃は、爽やかな渓谷の水のせせらぎを思い浮かべて気を紛らわせた。
ここでお腹が強い人は、そんな事したら逆効果じゃないかと思うかもしれない。
でもこれが一番いいんだ。
トイレを想像すると、トイレが恋しくなり過ぎるあまりに、発狂しそうになるのだ。
お腹を壊すたびに発狂していたら体力も持たないだろう。
高校の頃は、お金持ちの自分、雑紙のインチキ広告のような両側に金髪の女性を携えたところを想像していた。
こんな田舎の町で授業を受けているちっぽけな自分を認めたくなかったのかもしれない。
まぁ授業の内容はさっぱりわからなかったんだけどね。
今は、今はどうだろう。
僕は新橋の駅で味気ないカフェオレを飲んでいる。
キャラメル色の甘い飲み物だ。頼まなくても椅子に座れるなら僕は頼まなかっただろう。
そして明日の仕事、週末の事を考えている。
想像しうる、近々起きうる未来を想像しているのだ。
もう僕に突拍子もない世界は想像できないのかもしれない。
大人になったのかもしれない。