結論から言うと、インデックス投資の代わりとしてこの銘柄を選ぶ合理性はありません。
ただし、「資産形成のコア部分はインデックス、サテライトとして優待を楽しむ」という前提なら、少額で検討余地はあります。
理由はシンプルで、ヴィレッジヴァンガードは事業再建の途中にあり、配当ゼロ、業績も赤字続きだからです。
インデックスとの比較:数字で見る現実
まず、投資判断の基本となる数字を整理します。
本日時点の株価は970円、100株の投資金額は97,000円です。
優待利回りは10.3%(買物券10,000円分)と、数字だけ見れば魅力的に見えます。
一方、インデックス投資の代表格であるS&P500連動型や全世界株式(オルカン)の場合、過去の長期平均リターンはおおむね年率5~7%です。
配当込みで、再投資を前提とした複利効果が得られる設計です。
TOPIXも配当込みで年率3~5%程度が歴史的な平均水準として確認できます。
ここで重要なのは、この「平均リターン」の性質です。
インデックスは市場全体の成長を取りにいくため、個別企業リスクが分散されています。
一方、ヴィレッジヴァンガードは単一企業への集中投資です。
では、優待利回り10.3%がインデックスの5~7%を上回っているから有利なのか。
そうではありません。
優待は「現金」ではなく「自社店舗での買物券」であり、使い切れなければ実質利回りは目減りします。
さらに、配当がゼロなので、優待を使わない人にとっては「リターンゼロ」です。
業績面の比較:安定性の差
2026年5月期2Q累計(6-11月)の業績を見ると、売上高107億円、経常利益1.6億円の黒字と、8年ぶりに黒字浮上しました。
これは改善の兆しではあるものの、通期計画では経常利益9.3億円の予想に対して進捗率18%です。
つまり、下期に7.6億円の黒字を計上する前提であり、まだ予断を許しません。
前期(2025年5月期)の最終損益は42億円の赤字、うち棚卸資産の評価損24億円、減損損失6億円を計上しています。
これは事業構造の見直しが進行中であることを示しています。
店舗数も減少が続いており、全体で約3割にあたる81店舗の閉店方針が示されています。
対してインデックス投資は、こうした個別企業の業績リスクを市場全体で吸収します。
仮にある企業が倒産しても、指数全体への影響は限定的です。
ヴィレッジヴァンガードに全額を投じた場合、業績悪化や優待廃止が直撃します。
リスクとリターンの非対称性
投資判断で最も重要なのは、「リスクに見合ったリターンが得られるか」です。
インデックス投資のリスク・リターン構造
・リスク:市場全体の変動に連動(分散されている)
・リターン:配当+値上がり益、長期で年率3~7%が目安
・流動性:いつでも売却可能
・手間:ほぼゼロ(積立設定で放置できる)
ヴィレッジヴァンガード個別株のリスク・リターン構造
・リスク:単一企業の業績・優待制度変更に直面
・リターン:優待券10,000円分(ただし使える人のみ)、配当ゼロ
・流動性:東証スタンダード市場、出来高は限定的
・手間:四半期決算の確認、優待条件の変更確認が必要
つまり、リスクは明らかに個別株のほうが高いのに、リターンは「優待を使い切れる人」に限定されます。
インデックスなら配当と値上がり益の両方が期待でき、かつ手間がかかりません。
「疑義注記」の重さ
ヴィレッジヴァンガードには、現時点で「疑義注記、重要事象等あり」という注意書きがついています。
これは、継続企業の前提に重要な疑義が存在することを示す会計上の警告です。
インデックス投資では、こうした個別リスクは市場全体で薄まります。
しかし個別株投資では、この警告を無視することはできません。
優待が魅力的でも、企業が立て直しに失敗すれば、優待廃止どころか株価の大幅下落もあり得ます。
私ならどうするか
もし私が投資判断をするなら、次のように整理します。
インデックスを選ぶケース
・資産形成の中心として、長期で安定したリターンを求める
・個別企業の分析や優待管理の手間を避けたい
・配当再投資で複利効果を最大化したい
ヴィレッジヴァンガードを選ぶケース
・ヴィレッジヴァンガードで年間10,000円以上買い物をする習慣がある
・インデックス投資はすでに別枠で実行しており、「サテライト投資」として優待を楽しむ余裕がある
・100株(約10万円)という少額を、趣味の範囲でリスクを取れる
ここで強調したいのは、「インデックスかヴィレッジヴァンガードか」という二者択一ではなく、「資産のコアはインデックス、余剰資金のサテライトで優待株」という配分が現実的ということです。
具体的な投資配分例
仮に投資可能額が100万円あるとします。
パターンA:インデックス100%
・S&P500または全世界株式に100万円
・年率5%で運用すれば、10年後に約163万円(複利)
・配当再投資で雪だるま式に増える
パターンB:インデックス90%+ヴィレッジヴァンガード10%
・インデックスに90万円、ヴィレッジヴァンガードに10万円(100株)
・優待10,000円分を毎年使い切れば、優待利回り10%
・ただし株価下落リスクと優待廃止リスクは残る
パターンC:ヴィレッジヴァンガード100%
・全額を個別株に集中
・業績回復すれば株価上昇も期待できるが、失敗すれば大幅下落
・配当ゼロなので、インカムゲインなし
冷静に見て、パターンCを選ぶ合理性はありません。
パターンBは「優待を楽しむ」という目的があれば許容範囲ですが、あくまでサテライト投資です。
長期の資産形成を考えるなら、パターンAが最も堅実です。
最終結論
2769 ヴィレッジヴァンガードは、インデックス投資の代替としては不適格です。
理由は次の3点に集約されます。
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リターンの不確実性
優待利回り10.3%は魅力的に見えるが、実際に使い切れる人に限定される。配当ゼロなので、優待を使わない人にはリターンがない。 -
リスクの集中
単一企業への投資なので、業績悪化や優待廃止が直撃する。インデックスのようなリスク分散効果はゼロ。 -
業績の不安定性
疑義注記があり、事業再建の途中。黒字転換の兆しはあるが、まだ予断を許さない局面。
ただし、「インデックスで資産のコアを固めた上で、余剰資金で優待を楽しむ」という前提なら、100株(約10万円)を趣味の範囲で持つのは選択肢です。
その場合も、四半期決算と優待制度の変更を定期的に確認し、崩れたら即座に見直す前提で保有すべきです。
投資判断の軸は、「高利回りに見えるから買う」ではなく、「自分の資産戦略の中でどう位置づけるか」です。
インデックスという安定した土台があってこそ、個別株の優待を楽しむ余裕が生まれる、というのが現時点の結論です。