ろくなものを食べていないから、写真を撮る機会がぐっと減った。
思えばカメラがこんなに身近になったのはいつからだろう。
カメラ、写真の話をするときに僕はいつも思い出すことがある。
中学校で同じクラスだった井上君は、まぁヤンキーで問題児だった。
当時そこそこ仲が良かった僕は修学旅行の夜、彼と二人っきりで話をした。
少しかびの匂いがするふるい旅館の押し入れの中だったと思う。
みんなが道中のいたるところで写真を撮る中、彼はカメラを構える事は一度もなかった。
その事を聞くと、カメラを持ってきてないという。
「大事な事は、しっかり目で見て、心にとっとけばカメラなんていらんよ」
彼の台詞は、中二病のそれではなく、しっかりと意志を持った一人の大人の言葉だった。
僕は感動して、旅行カバンに大量につめた駄菓子を彼に振る舞った。
修学旅行の夜の、甘酸っぱくはないけれども、素敵な思い出だ。
余談だが、僕らは別々の高校にいった。
井上君がバイクで事故を起こし入院したと聞いたので、
当日付き合っていた彼女と使ってもらおうと、
大量のコンドームを抱えてお見舞いにいったら、それから口を聞いてもらえなくなった。
あの時はごめんなさい。